「児童発達支援の売上って、結局どうやって決まるの?」
開業を検討しているけれど、報酬体系が複雑で全体像がつかめない。そんな方は多いのではないでしょうか。
児童発達支援の収益モデルは、飲食業や小売業とはまったく構造が違います。売上の9割が国保連からの公費で支払われ、利用者の未収リスクがほぼないというユニークな仕組み。一方で、報酬単価は厚労省が定めた「基本報酬+加算」で決まるため、自分で価格設定できません。
この記事では、児童発達支援の収益モデルをゼロから解説します。令和6年度の報酬改定で導入された時間区分制に対応した最新の単価表、収益インパクトが大きい加算のランキング、そして稼働率別の月次・年商シミュレーションまで網羅しているので、開業判断のベースとして活用してください。
目次
児童発達支援の売上はどう決まる?報酬体系の基本構造
児童発達支援の報酬って、そもそもどこからお金が入ってくるんですか?
児童発達支援の売上は「基本報酬+加算」を軸にした報酬体系で決まります。まずはお金の流れ全体を押さえましょう。
売上の9割は国保連、1割が利用者負担(3〜5歳は無償化)
児童発達支援事業所の収入は、障害福祉サービスの報酬です。この報酬は厚生労働省が定めた「単位数」に基づいて計算され、原則として以下のように分かれます。
- 9割は国民健康保険団体連合会(国保連)に請求 → サービス提供月の約2ヶ月後に入金
- 1割は利用者(保護者)に請求 → 月末締め翌月請求が一般的
ただし、2019年10月から3〜5歳の未就学児は利用料が無償化されています。つまり3〜5歳児が利用する場合、報酬の全額を国保連に請求する形になります。0〜2歳児の利用がある場合のみ利用者負担(1割)が発生する仕組みです。
利用者負担の上限額——世帯収入で決まる
3〜5歳は無償化ですが、0〜2歳の利用者負担にも世帯所得に応じた月額上限が設けられています。
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| 世帯区分 | 月額上限額 |
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| 生活保護世帯・住民税非課税世帯 | 0円 |
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| 世帯所得 約890万円未満 | 4,600円 |
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| 世帯所得 約890万円以上 | 37,200円 |
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このように利用者の自己負担には上限があるため、利用回数が増えても保護者の負担は一定額で頭打ちになります。事業所側から見ると、利用頻度が上がるほど国保連からの報酬が増えるため、売上が純増する構造です。
売上を決める方程式はシンプル
児童発達支援の月間売上は、突き詰めると以下の式で表せます。
児童発達支援の売上方程式
月間売上 =(基本報酬 + 各種加算)× 1日あたり利用者数 × 営業日数 × 10円
※1単位=10円が基本。地域区分による上乗せ(最大15%)あり
この式からわかるように、売上を伸ばす方法は「基本報酬を最大化する(時間区分を上げる)」「加算を増やす」「利用者数を増やす(稼働率を上げる)」の3つしかありません。これが児童発達支援の収益モデルの骨格です。
【令和6年改定対応】児童発達支援の基本報酬単価表
令和6年度(2024年4月)の報酬改定で、児童発達支援の基本報酬に「時間区分制」が導入されました。支援時間の長さによって報酬が3段階に分かれる仕組みです。これは収益モデルを考えるうえで最も重要な変更点なので、しっかり押さえておきましょう。
時間区分は3段階——支援時間で基本報酬が変わる
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| 時間区分 | 支援時間 | 概要 |
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| 時間区分1 | 30分以上〜1時間30分以下 | 短時間の個別支援向け |
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| 時間区分2 | 1時間30分超〜3時間以下 | 標準的な支援 |
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| 時間区分3 | 3時間超〜5時間以下 | 長時間の集団+個別支援 |
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「支援時間」とは実際にかかった時間ではなく、個別支援計画に定めた標準的な時間を指します。ただし事業所都合で短縮された場合は、実際の時間で判定されるので注意が必要です。
定員別×時間区分別の基本報酬単価(児童発達支援事業所)
一般的な児童発達支援事業所(センター以外・医療的ケア児以外)の基本報酬を、定員別×時間区分別で整理しました。
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| 定員 | 時間区分1 | 時間区分2 | 時間区分3 |
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| 10人以下 | 604単位 | 789単位 | 980単位 |
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| 11〜15人 | 519単位 | 678単位 | 842単位 |
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| 16〜20人 | 453単位 | 591単位 | 734単位 |
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| 21〜25人 | 397単位 | 519単位 | 644単位 |
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| 26〜30人 | 348単位 | 455単位 | 565単位 |
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※1単位=10円(地域区分による上乗せ別)。旧個別サポート加算(Ⅰ)が基本報酬に包括されています。
収益モデルへのインパクト
定員10名以下×時間区分3で980単位(9,800円/人日)。仮に1日8名利用×22日営業なら、基本報酬だけで月172万円。時間区分1だと月106万円なので、同じ定員・稼働率でも時間区分の選択だけで月66万円の差が生まれます。
時間区分3を狙うべき理由と注意点
売上を最大化するなら時間区分3(3時間超〜5時間以下)を基本設計にすべきです。とはいえ、ただ長時間預かればいいわけではありません。5領域を網羅した充実した支援プログラムを組み、その内容に基づいた個別支援計画を作成する必要があります。
令和7年4月以降は、支援プログラムが未公表の事業所には所定単位数の15%減算が適用されます。時間区分3で報酬を最大化しつつ、支援の質も担保する——この両立が経営の要になっています。
収益インパクト順|児童発達支援の主要加算一覧【令和6年改定対応】
基本報酬だけでは利益を出すのが難しいのが児童発達支援の現実。売上を伸ばすカギは「加算をどれだけ積めるか」にかかっています。ここでは収益インパクトの大きい順に主要な加算を整理しました。
Aランク|月10万円以上の収益インパクト
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| 加算名 | 単位数 | 月額目安(8名×22日) | 取得条件の概要 |
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| 児童指導員等加配加算 | 125〜187単位/日 | 22〜33万円 | 基準以上の児童指導員等を1名以上加配 |
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| 専門的支援加算 | 150〜200単位/日 | 26〜35万円 | PT・OT・ST・心理士・5年以上の保育士等を配置 |
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| 処遇改善加算(新Ⅰ〜Ⅳ) | 基本報酬の8.4〜14.5% | 15〜25万円 | 職員の処遇改善計画の策定・届出 |
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| 個別サポート加算(Ⅰ) | 120単位/日 | 約21万円 | 著しく重度の障害児を受入れ(5領域11項目で判定) |
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Bランク|月5〜10万円の収益インパクト
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| 加算名 | 単位数 | 月額目安 | 取得条件の概要 |
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| 福祉専門職員配置等加算 | 6〜15単位/日 | 1〜3万円 | 有資格者の配置割合を高める |
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| 送迎加算(Ⅰ) | 54単位/回(片道) | 約10万円 | 送迎を実施(往復で108単位) |
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| 家族支援加算 | 80〜300単位/回 | 3〜8万円 | 家庭訪問や事業所内相談支援の実施 |
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| 欠席時対応加算(Ⅰ) | 94単位/回 | 2〜5万円 | 利用予定日の欠席に対する相談援助 |
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Cランク|条件次第で取得したい加算
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| 加算名 | 単位数 | 取得条件の概要 |
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| 中核機能強化事業所加算 | 78〜247単位/日 | センター未設置地域で中核的役割を担う |
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| 個別サポート加算(Ⅱ) | 125単位/日 | 虐待等の要保護・要支援児童を受入れ |
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| 延長支援加算 | 61〜128単位/回 | 計画時間を超えた延長支援の実施 |
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| 保育・教育等移行支援加算 | 500単位/回 | 保育所等への移行を支援した場合 |
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Aランクの加算をフル活用すると、基本報酬に加えて月80〜110万円の上乗せが可能です。年間では約1,000〜1,300万円の差になるので、加算戦略は経営のコア中のコアですよ。
加算は「満たしていれば自動で付く」ものではなく、会議録や支援記録の作成、届出手続きが必要です。取りこぼしを防ぐために、国保連への請求前に毎月チェックリストで確認する運用を組みましょう。
児童発達支援の月次売上シミュレーション【稼働率70%/80%/90%】
ここからは、定員10名の児童発達支援事業所を想定して、稼働率別の月次売上を試算します。前提条件は以下のとおりです。
- 定員10名、営業日数22日/月
- 基本報酬は時間区分3(980単位/人日)で算出
- 主要加算はAランクの児童指導員等加配加算+専門的支援加算+処遇改善加算を想定
- 送迎加算(往復108単位)を利用者の80%に適用
- 1単位=10円(地域加算なし)で計算
稼働率別の月次売上シミュレーション表
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| 項目 | 稼働率70%(7名/日) | 稼働率80%(8名/日) | 稼働率90%(9名/日) |
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| 基本報酬(980単位×人数×22日) | 約151万円 | 約172万円 | 約194万円 |
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| 児童指導員等加配加算 | 約19万円 | 約22万円 | 約25万円 |
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| 専門的支援加算 | 約23万円 | 約26万円 | 約30万円 |
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| 送迎加算(往復・80%適用) | 約13万円 | 約15万円 | 約17万円 |
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| 処遇改善加算(約14%) | 約21万円 | 約24万円 | 約27万円 |
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| その他加算(家族支援・欠席時等) | 約5万円 | 約6万円 | 約7万円 |
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| 月間売上合計 | 約232万円 | 約265万円 | 約300万円 |
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稼働率70%で月232万円、80%で265万円、90%で300万円。稼働率が10%上がるごとに月30〜35万円の売上増になるイメージです。
加算なしの場合と比較するとどうなる?
Aランク加算をまったく取得せず、基本報酬+送迎加算+処遇改善加算のみで運営した場合の月間売上も比較してみましょう。
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| パターン | 稼働率80%の月間売上 | 差額 |
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| 加算フル活用(上記シミュレーション) | 約265万円 | — |
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| 加配・専門的支援なし | 約217万円 | ▲48万円/月 |
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| 送迎もなし(基本報酬+処遇改善のみ) | 約196万円 | ▲69万円/月 |
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加算を取るか取らないかで、同じ稼働率80%でも年間570〜830万円の売上差が生まれます。人件費を増やしてでも加算要件を満たすスタッフを配置したほうが、トータルの利益は大きくなるケースがほとんどです。
児童発達支援の年商モデル|1年目〜3年目の売上推移
月次シミュレーションを踏まえて、開業1年目〜3年目の年商モデルを組んでみました。稼働率は開業直後の低い水準から段階的に上がる前提です。
開業1年目〜3年目の年商推移モデル
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| 年度 | 平均稼働率 | 月商目安 | 年商 | 備考 |
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| 1年目(前半) | 40〜60% | 140〜200万円 | — | 利用者獲得フェーズ。赤字覚悟 |
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| 1年目(後半) | 65〜75% | 215〜250万円 | — | 損益分岐を超え始める |
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| 1年目通期 | 55〜68% | — | 約2,100〜2,700万円 | 営業利益は▲100〜+100万円程度 |
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| 2年目通期 | 75〜85% | 250〜280万円 | 約3,000〜3,400万円 | 単月黒字が安定。年間利益200〜500万円 |
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| 3年目通期 | 80〜90% | 265〜300万円 | 約3,200〜3,600万円 | 加算最適化が進み利益率15〜25% |
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厚労省の令和5年経営実態調査では、児童発達支援の年間売上モデルは約3,903万円(定員18名ベース)。上の表は定員10名モデルなので売上規模は小さくなりますが、利益率は定員10名以下のほうが高い(7.9%)という傾向があります。
1年目は赤字になることも想定しておきましょう。国保連からの入金は2ヶ月後なので、最低6ヶ月分の運転資金を確保してからスタートするのが鉄則です。
支出の内訳——人件費が全体の65〜70%を占める
年商だけ見ても利益はわかりません。支出構造も把握しておきましょう。
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| 支出項目 | 年間目安(定員10名) | 構成比 |
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| 人件費(管理者兼児発管+常勤2名+非常勤1名) | 1,680〜2,040万円 | 約65〜70% |
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| 家賃 | 180〜300万円 | 約7〜10% |
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| 送迎車両費(リース・燃料・保険) | 60〜96万円 | 約2〜3% |
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| 教材費・消耗品・光熱費 | 72〜120万円 | 約3〜4% |
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| 広告宣伝費 | 36〜60万円 | 約1〜2% |
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| その他(保険・顧問料・システム等) | 84〜120万円 | 約3〜4% |
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| 年間支出合計 | 約2,100〜2,700万円 | 100% |
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3年目の年商3,200〜3,600万円から支出2,100〜2,700万円を差し引くと、年間利益は500〜900万円。利益率にして15〜25%が現実的な水準です。
3〜5歳無償化は売上にどう影響する?キャッシュフローの注意点
2019年10月から実施されている幼児教育・保育の無償化は、児童発達支援にも適用されています。この制度が事業所の売上やキャッシュフローにどう影響するか、意外と見落とされがちなポイントを整理します。
無償化で「利用者負担ゼロ」になる範囲
無償化の対象は、満3歳になって初めての4月1日から3年間(いわゆる年少〜年長)の期間。この年齢の児童が児童発達支援を利用する場合、利用者負担は0円になり、報酬全額を国保連に請求する形になります。
事業所にとっての無償化メリット
売上総額は変わりません。無償化は利用者負担分を国が肩代わりする仕組みなので、事業所が受け取る報酬の合計は同じです。むしろ利用者にとって負担がなくなることで、利用のハードルが下がり、稼働率アップにつながるプラス効果があります。
注意点は入金タイミング——全額が2ヶ月後入金に
無償化以前は、利用者負担分(1割)をサービス提供月の翌月に保護者から回収し、残り9割を2ヶ月後に国保連から受け取る流れでした。
無償化後は全額が国保連経由になるため、売上の100%が「2ヶ月後入金」になります。開業直後のキャッシュフローが厳しくなる可能性があるため、運転資金の確保がより重要です。
具体的には、4月にサービスを提供しても入金は6月中旬。最初の2ヶ月間はほぼ収入ゼロの状態で人件費や家賃を支払う必要があります。WAM(福祉医療機構)の低利融資や自治体の開業支援補助金を活用して、余裕のある資金計画を立てておきましょう。
よくある質問(FAQ)
- 基本報酬の「1単位=10円」は全国共通ですか?
-
基本は1単位=10円ですが、地域区分によって0〜15%の上乗せがあります。東京23区は最大15%増(1単位=11.5円)、地方部は上乗せなし(1単位=10円)が多いです。開業予定地域の地域区分を事前に確認しておきましょう。
- 時間区分は事業所が自由に選べますか?
-
事業所全体で統一する必要はなく、児童ごとの個別支援計画に定めた支援時間で判定されます。ただし、事業所の運営モデルとして「時間区分3を基本にする」と設計しておくのが一般的です。30分未満の支援は原則として報酬算定の対象外になります。
- 加算は何種類くらい取得するのが普通ですか?
-
黒字経営をしている事業所は、処遇改善加算に加えて少なくとも2〜3種類の加算を取得しているケースが多いです。特に児童指導員等加配加算と送迎加算は取得率が高く、ここを外すと利益を出すのが厳しくなります。
- 売上を上げるために定員を増やすべきですか?
-
必ずしも定員増が正解ではありません。厚労省のデータでは定員10名以下の事業所が最も収支差率が高い(7.9%)という結果が出ています。定員を増やすと人件費も増えるため、まずは小規模で稼働率を最大化する戦略が堅実です。
- 国保連からの入金が2ヶ月後というのは変わらないのですか?
-
原則として変わりません。サービス提供月の翌月上旬に国保連へ請求を行い、翌々月の中旬頃に入金されます。この2ヶ月のタイムラグは児童発達支援の収益モデルにおける最大の注意点なので、開業前に十分な運転資金を確保しておくことが重要です。
まとめ|児童発達支援の収益モデルを理解して堅実な開業判断を
この記事のポイント
- 売上の9割は国保連からの公費。3〜5歳は利用者負担ゼロ(無償化)
- 基本報酬は時間区分3(3時間超)で最大化。定員10名以下×時間区分3なら980単位/人日
- 加算の有無で同じ稼働率でも年間570〜830万円の売上差が生まれる
- 稼働率80%+加算フル活用で月商約265万円、年商約3,200万円が目安
- 3年目で利益率15〜25%(年間利益500〜900万円)が現実的な水準
- 入金は2ヶ月後。開業前に6ヶ月分の運転資金確保が必須
児童発達支援の収益モデルは、「基本報酬×利用者数×営業日数+加算」というシンプルな構造。でもその中身を正しく理解しているかどうかで、開業後の利益に大きな差がつきます。
特に加算戦略と稼働率の両立が経営の要。これからの開業を検討している方は、報酬体系を頭に入れたうえで事業計画を組んでみてください。
「自分で事業計画を組むのは不安」という方は、開業支援のプロに相談するのも一つの手です。ブロッサムジュニアでは、報酬シミュレーションから加算戦略の立案まで、FC加盟前の段階から無料で相談を受け付けています。