起業や開業の資金調達を考えるとき、ぜひ活用したいのが返済不要の「補助金・助成金」です。融資と違って返す必要がないため、うまく活用すれば資金繰りを大きく楽にできます。ただし、制度は年度ごとに内容が見直され、過去に存在した制度が廃止されていることも珍しくありません。古い情報のまま動くと、申請しようとした制度がすでに終了していた、という事態にもなりかねません。
この記事では、2026年の最新情報をもとに、起業で使える主要な補助金・助成金を一覧で整理し、申請手順と採択率を上げるコツまで解説します。なお、制度の内容や公募期間は変更される可能性があるため、実際に申請する際は必ず各制度の公式サイトで最新情報を確認してください。
目次
起業で使える「補助金」と「助成金」の違い
まず押さえておきたいのが、「補助金」と「助成金」の違いです。どちらも返済不要の公的支援ですが、仕組みが大きく異なるため、自分の状況に合うほうを狙う必要があります。
補助金=競争選抜・高額・後払い
補助金は主に経済産業省や自治体が管轄し、申請しても審査に通らなければ受け取れない競争選抜型です。その分、採択されれば数百万円規模の高額な支援を受けられるものが多いのが特徴。公募期間が限られており、事業計画書の質が採択を左右します。
助成金=要件充足型・確実性が高い
助成金は主に厚生労働省が管轄し、定められた要件を満たせば原則として受給できるのが特徴です。補助金に比べて支給額は抑えめな傾向がありますが、確実性が高く、雇用や人材育成に関するものが中心。通年で申請できる制度も多く、計画的に活用しやすいのが利点です。
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| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|
| 主な管轄 | 経済産業省・自治体 | 厚生労働省 |
|---|
| 受給のしやすさ | 競争選抜(採択が必要) | 要件充足型(要件を満たせば受給) |
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| 支給額 | 高額(数百万〜数千万円) | 抑えめ(数十万〜数百万円) |
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| 主な対象 | 設備投資・販路開拓・事業拡大 | 雇用・人材育成・処遇改善 |
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| 申請時期 | 公募期間が限定的 | 通年が多い |
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共通の注意点(後払い・事務負担)
補助金・助成金に共通する最大の注意点が、原則「後払い」であることです。先に自己資金で経費を支払い、後から補助金が振り込まれる流れのため、開業資金そのものには充当できません。あくまで「立て替えた費用が後から戻ってくる」制度と理解し、入金までの資金繰りを別途用意しておく必要があります。また、申請には書類作成などの事務負担が生じる点も覚えておきましょう。
「補助金が出るから開業資金は少なくて大丈夫」と考えるのは危険です。補助金は後払いなので、開業時にはいったん全額を自己資金や融資でまかなう必要があります。補助金は”資金計画の前提”ではなく、”後から戻ってくるボーナス”くらいの位置づけで考えるのが安全です。
【2026年最新】起業で使える補助金一覧
まずは、起業・開業時に活用しやすい主要な補助金を紹介します。なお、かつて存在した「創業補助金」は現在は実施されておらず、創業期の支援は以下の制度が中心になっています。
小規模事業者持続化補助金(創業型あり)
小規模事業者の販路開拓を支援する、起業初心者に最もおすすめの補助金です。一般型(通常枠)の補助上限は50万円ですが、特例の活用で最大250万円まで上乗せ可能。2026年からは創業から1年以内の事業者を対象とした「創業型」が設けられ、通常枠より大きい最大250万円の上限が狙えるようになりました。これから開業する方にとって、活用しやすい制度に進化しています。
申請には商工会・商工会議所への相談とGビズIDプライムの取得が必要です。近年の採択率は50%前後で推移しており、事業計画書の作り込みが採否を分けます。
中小企業新事業進出補助金
新分野・新事業への進出を支援する補助金で、既存事業を持つ中小企業が新たに別事業を立ち上げる際に活用できます。設備投資を伴う比較的大きな事業展開を想定しており、補助額も高めに設定されているのが特徴です。異業種から福祉などの新分野へ参入する場合に検討したい制度です。
ものづくり補助金
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。革新的な製品・サービスの開発や生産性向上のための設備投資を支援します。製造業のイメージが強いですが、サービス業も対象です。小規模事業者や個人事業主でも申請でき、まとまった設備投資を計画している場合に有力な選択肢になります。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
業務効率化やデジタル化のためのソフトウェア・ツール導入を支援する補助金です。会計ソフトや予約管理システム、請求業務システムなどの導入費用が対象になります。比較的申請しやすく、開業時のICT環境整備に活用しやすい制度です。
自治体の創業補助金
国の制度とは別に、都道府県や市区町村が独自の創業支援補助金を設けているケースが数多くあります。法人設立費や備品購入費、広報費などを補助するもので、上限額は数万円〜数百万円とさまざま。地域によって有無や内容が大きく異なるため、開業予定地の自治体ホームページや商工会議所で必ず確認しましょう。意外な掘り出し物が見つかることもあります。
【比較表】主要補助金の上限額・補助率・対象
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| 補助金名 | 補助上限額の目安 | 主な対象経費 | こんな方に |
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| 小規模事業者持続化補助金(創業型) | 最大250万円 | 販路開拓・広報・設備 | 創業1年以内の小規模事業者 |
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| 中小企業新事業進出補助金 | 数千万円規模 | 新分野進出の設備投資 | 新事業に参入する中小企業 |
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| ものづくり補助金 | 数百万〜数千万円 | 革新的な設備投資 | 設備投資を伴う事業者 |
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| デジタル化・AI導入補助金 | 数十万〜数百万円 | ソフトウェア・ITツール | 業務のデジタル化を進めたい方 |
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| 自治体の創業補助金 | 数万〜数百万円 | 法人設立費・備品・広報 | 対象地域で創業する方 |
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補助金は「自分の事業フェーズと経費に合うもの」を選ぶのが鉄則です。開業直後の販路開拓なら持続化補助金、まとまった設備投資ならものづくり補助金、というように使い分けます。複数の制度を組み合わせて活用することも可能なので、まずは自分が使えそうな制度を洗い出してみましょう。
【2026年最新】起業で使える助成金一覧
続いて、人を雇って事業を始める際に活用できる主要な助成金を紹介します。助成金は要件を満たせば受給できる確実性の高さが魅力で、特に開業時にスタッフを雇用する場合に役立ちます。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
有期雇用やパート・アルバイトの従業員を正社員に転換した事業主を支援する、最も広く使われている助成金です。正社員化コースでは1人あたり最大80万円が支給されます。2026年度も継続実施中で、終了期日は定められていません。開業後にパートスタッフを正社員登用する場面で活用しやすい制度です。
申請には、キャリアアップ計画の作成や就業規則の整備が必要で、転換前後で賃金を3%以上増額するなどの要件があります。申請から支給までは1年程度を見込んでおきましょう。
地域雇用開発助成金
雇用機会が不足している地域で事業所を設置・整備し、その地域に住む求職者を雇い入れた事業主を支援する助成金です。施設の設置費用と雇用人数に応じて助成され、対象地域での開業なら大きな支援が期待できます。自分の開業予定地が対象地域に含まれるかを、事前に確認しておきましょう。
人材開発支援助成金
従業員に職業訓練や研修を実施した際に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。専門性が求められる業種では、開業後のスタッフ育成にかかる費用を軽減できます。新しく雇ったスタッフを一人前に育てる過程で活用すると、人材育成コストを抑えられます。
【比較表】主要助成金の支給額・対象
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| 助成金名 | 支給額の目安 | 主な対象 |
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| キャリアアップ助成金(正社員化コース) | 1人あたり最大80万円 | 非正規から正社員へ転換した事業主 |
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| 地域雇用開発助成金 | 設置費・雇用人数に応じて | 雇用機会不足地域で開業・雇用する事業主 |
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| 人材開発支援助成金 | 訓練経費・賃金の一部 | 従業員に訓練・研修を行う事業主 |
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助成金は「人を雇う・育てる」場面で力を発揮します。開業時に複数のスタッフを雇用する事業なら、キャリアアップ助成金や地域雇用開発助成金は特に相性が良いです。ただし、いずれも事前の計画届出が必要なケースが多いので、雇用を始める前に社労士や労働局に相談しておきましょう。
補助金・助成金の申請手順【4ステップ】
補助金・助成金の申請は、おおむね次の4ステップで進みます。特に補助金は電子申請が基本となっており、事前準備が欠かせません。
STEP
GビズIDプライムを取得する
多くの補助金は電子申請システムを使うため、まず事業者共通の認証ID「GビズIDプライム」を取得します。発行に時間がかかる場合があるので、早めに申請しておきましょう。
STEP
公募要領を確認し、自社に合う制度を選ぶ
公募要領には対象者・対象経費・補助率・締切などが記載されています。自分の事業フェーズと使いたい経費に合う制度を選び、要件を満たしているか確認します。
STEP
事業計画書を作成する
補助金の採否を最も左右するのが事業計画書です。なぜその事業を行うのか、どう収益を上げるのかを、客観的なデータをもとに論理的に記載します。
STEP
電子申請し、入金までの流れを管理する
電子申請後、採択発表→交付決定→事業実施→実績報告→入金という流れで進みます。入金は事業完了後の後払いになるため、それまでの資金繰りを計画しておきます。
補助金・助成金の採択率を上げる3つのポイント
特に競争選抜型の補助金は、ただ申請するだけでは採択されません。採択率を高めるために押さえておきたい3つのポイントを紹介します。
数字の根拠がある事業計画を作る
審査員が見るのは「この事業が本当に実現可能か」という点です。売上予測や市場規模を、希望的観測ではなく客観的なデータと根拠で示しましょう。地域の需要、競合状況、収支計画などを具体的な数字で裏付けることが、説得力につながります。
加点項目を漏れなく取得する
多くの補助金には「加点項目」が設定されています。事業継続力強化計画の認定や、賃上げの表明など、満たせば審査で有利になる項目です。これらを漏れなく取得することで、採択の可能性が大きく高まります。公募要領の加点項目は必ずチェックしましょう。
早めに専門家・支援機関に相談する
商工会・商工会議所、認定経営革新等支援機関、社労士・行政書士などの専門家は、補助金・助成金申請のノウハウを豊富に持っています。締切間際に慌てて準備するのではなく、早めに相談して計画的に進めることが、質の高い申請書類につながります。無料相談を実施している支援機関も多いので、積極的に活用しましょう。
補助金申請でつまずく方の多くが「締切直前に動き出す」パターンです。事業計画書の作成には想像以上に時間がかかります。使いたい制度が見つかったら、締切から逆算して、できるだけ早く準備に取りかかってください。
放課後等デイサービス・福祉開業で使える補助金は?
ここまで紹介した補助金・助成金は、福祉事業の開業でも活用できます。特に放課後等デイサービスのような人を雇って始める事業では、雇用関係の助成金との相性が良いのが特徴です。
たとえば、開業時に児童指導員や保育士などのスタッフを雇用し、後に正社員へ転換する場合はキャリアアップ助成金が活用できます。また、ICT環境の整備にはデジタル化・AI導入補助金、販路開拓や広報には小規模事業者持続化補助金(創業型)が使えるなど、福祉開業の各場面で制度を組み合わせることが可能です。
福祉事業ならではの注意点や、放課後等デイサービスの開業で具体的にどの補助金・助成金が使えるかについては、専門の解説記事で詳しくまとめています。福祉分野での開業を検討している方は、あわせてご覧ください。
福祉事業は売上の大半が公金でまかなわれる安定性の高いビジネスですが、開業時には人材採用や設備投資にまとまった資金が必要です。補助金・助成金を賢く組み合わせれば、その負担を大きく軽減できます。制度の活用も含めた資金計画は、経験豊富なパートナーに相談すると安心です。
起業の補助金・助成金に関するよくある質問
- 補助金と助成金はどちらを狙うべきですか?
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目的によって使い分けるのがおすすめです。設備投資や販路開拓にまとまった資金が必要なら高額な補助金を、人を雇用・育成する場面なら確実性の高い助成金を狙うとよいでしょう。両方を組み合わせて活用することも可能です。補助金は採択されないと受け取れない点、助成金は要件を満たせば受給できる点を理解して選びましょう。
- 「創業補助金」は今でも申請できますか?
-
かつて存在した国の「創業補助金」は現在は実施されていません。創業期の支援としては、小規模事業者持続化補助金の「創業型」や、各自治体が独自に設けている創業補助金が中心になっています。古い情報を見て申請しようとすると制度が終了していることがあるため、必ず最新の公式情報を確認してください。
- 補助金は開業資金として使えますか?
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原則として開業資金そのものには使えません。補助金・助成金は「後払い」が基本で、先に自己資金で経費を支払い、後から補助金が振り込まれる仕組みだからです。そのため、開業時にはいったん全額を自己資金や融資でまかなう必要があります。補助金は資金繰りの前提ではなく、後から戻ってくる資金として計画に組み込みましょう。
- 補助金の採択率はどのくらいですか?
-
制度や公募回によって異なりますが、たとえば小規模事業者持続化補助金の近年の採択率は50%前後で推移しています。採択率を上げるには、客観的なデータに基づく実現性の高い事業計画書の作成と、加点項目の取得が重要です。専門家や支援機関に早めに相談することで、採択の可能性を高められます。
- 補助金・助成金の申請は自分でできますか?
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自分で申請することも可能ですが、事業計画書の作成や要件確認には専門知識が求められます。特に補助金は採択を競う競争選抜型のため、商工会・商工会議所や認定支援機関、社労士・行政書士などの専門家のサポートを受けると採択率が高まります。無料相談を実施している支援機関も多いので、活用するとよいでしょう。
まとめ|起業の補助金・助成金は「最新情報」と「早めの準備」が鍵
この記事のポイント
- 補助金は競争選抜・高額・後払い、助成金は要件充足型・確実性が高い
- 「創業補助金」は現在なし。持続化補助金の創業型(最大250万円)が中心
- 雇用するならキャリアアップ助成金(1人最大80万円)などが活用できる
- 申請は「GビズID取得→公募要領確認→事業計画書作成→電子申請」の4ステップ
- 採択率を上げる鍵は「数字の根拠」「加点項目」「早めの専門家相談」
起業で使える補助金・助成金は数多くありますが、制度は年度ごとに変わるため、常に最新情報を確認することが何よりも大切です。返済不要の資金は事業の大きな後押しになります。後払いという特性を理解したうえで資金計画に組み込み、早めの準備で採択率を高めていきましょう。
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